派遣の事務職ってあり?メリット・デメリットや正社員になりたい場合の方法を解説

ワーク・ライフ・バランスを取りやすい仕事であるため、事務職は人気の職種です。人気が集中するため、正社員で働ける求人は倍率が高く、事務職未経験の人は派遣やアルバイトから始めるケースもあるでしょう。

事務の派遣社員にもメリットはありますが、雇用や収入の安定性、キャリアプランを考えるとデメリットも存在します。とりあえず派遣で事務の仕事に就けたけれど、先々を考えると不安になるケースも珍しくありません。

今回は、事務の派遣社員で働く場合のメリット・デメリットや、派遣の事務職から正社員になる方法について解説します。

事務の派遣社員として働くメリット

できれば正社員として雇用されたいけれど、事務職で正社員採用の求人は人気が高いため、なかなか見つからないこともあります。応募できそうな求人情報を見つけて応募しても競争率が高く、採用されないケースも珍しくありません。

そんなときは、ひとまず雇用形態にこだわらず、派遣社員やアルバイトで事務職を経験するのも方法の一つ。事務の派遣社員として働くメリットを紹介します。

未経験でも始めやすい

事務職の正社員採用を狙う場合、経験や関連スキルを持つ人のほうが有利です。

採用予定1名のところに複数の人が応募してきたなら、採用する側はより経験やスキルの高い人を優先するでしょう。事務職未経験の人では、採用が難しいと予想されます。

一方、派遣社員の場合、未経験でも事務職で働ける可能性は高まります。派遣会社で事務に関連したスキルの研修を実施しているなら、積極的に活用すると良いでしょう。

ひとまず派遣で事務職の経験を積み、役立つスキルを習得しながら、正社員採用の機会を探せます。

業務範囲を線引きできる

派遣社員として働く場合、担当業務が事前に定められています。派遣先の職場が担当外の仕事を頼む際は派遣元の会社に申し出て、確認を取らなければなりません。

正社員として働くと、会社や職場側の都合で業務内容が変わることもあります。業務が追加され、責任ある立場になることもあり、負担を感じる人もいるでしょう。

例えば、最初はデータ入力とメールチェック・返信作業のみ担当だったのが、経験に応じて見積書や請求書の作成、電話対応、入金確認などの業務が追加される、といったケースです。後輩の監督・指導を任されたり、会議に出席したりといった業務が増えることもあり、業務量や責任に応じて残業が増える可能性も。

念願の事務職で働けても想定外の仕事を頼まれ「こんなはずではなかった」となっては一大事です。

派遣社員ならば担当業務が大幅にかわる可能性が少なく、変更が生じる際は派遣会社経由で打診があるため、業務範囲の線引きがやりやすくなります。

契約更新のタイミングで辞められる

正社員として雇用契約を結ぶ場合、定年を待たずに退職するなら事前に申し出る必要があります。場合によっては引き留められ、面倒に感じるかもしれません。また、職歴に退職事実が増えるのもネックです。

派遣社員は3ヶ月や1年など、働く期間が定められており、職場と派遣社員の双方が合意した場合に契約更新されます。もし、更新のタイミングで辞めたいと考えているなら、その旨を派遣会社に伝えて契約終了の手続きが可能です。

派遣先から引き留められる可能性もゼロではありませんが、派遣会社が間に入ってくれるため、正社員の場合よりも面倒ごとがないでしょう。退職ではなく契約期間終了という扱いになるため、職場を変えても職歴の印象が悪くなりにくいメリットもあります。

期限を区切った働き方がしやすい

基本的に派遣社員で働く場合、同じ職場で働けるのは最長3年間です。契約期間も3ヶ月や1年など、最初から決められています。そのため、派遣社員は最初から期限を区切った働き方がしやすい雇用形態です。

例えば配偶者の転勤に合せて転居する機会が多い人は、派遣で働いたほうが1年ごと・2年ごとに職場を変えることも容易です。

正社員にも定年がありますが、60歳まで・65歳までなどと長く、ライフスタイルの変化に合わせた働き方の変更が難しい部分も存在します。

事務の派遣社員として働くデメリット

事務の派遣社員として働くメリットを紹介しましたが、デメリットも理解しておきましょう。デメリットを知らないまま派遣で働き始めると後悔するかもしれません。

職場が合わなければ契約更新のタイミングで辞めるのも手ですが、なるべく長く同じ職場に派遣されているほうが、派遣元からの評価は高まります。契約更新につながらない人材と評価されると、条件の良い派遣先を紹介してもらえなくなる原因です。

派遣先で待遇格差を感じる

派遣先の職場によっては、派遣社員と正社員の待遇差を感じることがあります。具体的には、職務の違いから福利厚生施設を利用できなかったり、労働条件の違いから休憩時間が違ったりといった差です。

雇用形態・条件が違う以上、致し方ないこととして割り切る必要があります。

ただし、派遣社員であることを理由に、職場内で差別があるならば問題です。派遣社員を蔑視する発言や仕事の妨害行為などがあれば派遣会社に相談し、適切な対応を求めましょう。

休業日の多い月は収入が減る

派遣社員で働く場合、基本的には派遣先の営業スケジュールに合せて働きます。祝日が多い月や年末年始・お盆休暇のある月は出勤日数が減るため、時給制で働く派遣社員は給与が下がります。

正社員の場合は出勤日数に関わらず、毎月固定の給与があるため安定した収入を得られますが、派遣社員は収入が不安定な一面もあると覚えておきましょう。

収入を増やすことが難しい

派遣会社の給与システムや派遣先の方針などにより違いはありますが、派遣社員で働くと同じ職場にいる間は収入を増やしにくい部分があります。収入を増やしたいなら、今より条件の良い派遣先で働けるようになる必要があるでしょう。

また、正社員の場合、毎月の給与に加えてボーナスや退職金を受け取れます。しかし、派遣社員にはボーナスや退職金がないケースがほとんどです。昇格・昇進もないため、基本給のアップもなかなかありません。

同じ派遣先での経験が増え、当初の仕事内容から変更があった場合は状況に応じて時給が上がるケースもありますが、機会としては稀です。派遣先の方針では、派遣社員の時給は固定とし、昇給の交渉すらできないケースもあります。

条件の良い派遣先で働くにはスキルや経験を求められる

事務職が未経験でも派遣会社から仕事の紹介を受けられますが、良い条件の派遣先で働くには、スキルや経験を求められます未経験から派遣の事務を始めた場合、最初は時給が低い仕事や多少希望と離れた仕事を紹介されることもあります。

かといって、条件に合わない仕事の紹介を断り続けていると、いつまで立っても事務職未経験から脱却できません。まずは事務の経験を積むために派遣社員を選ぶのなら、ある程度の経験を積むまでは条件に合わない仕事も挑戦したほうが良いこともあります。

派遣先での働きぶりが評価され、事務経験やスキルが高まれば、より良い条件の仕事を紹介してもらえる可能性がアップします。

同じ派遣先で働ける期間が限られる

派遣社員には「3年ルール」と言われる制限があり、同じ職場で3年を超えて働けません。これは、期間の決められた派遣労働者の雇用安定とキャリアアップを目的に定められている制限です。そのため、派遣先の職場環境が良く、長く働き続けたいと思っていても、派遣社員は派遣期間が3年を超えると更新できません

同じ職場で働き続けるには、派遣先から直接雇用されるか、雇用期間の定めがない派遣社員になるか、いずれかの選択が必要です。いずれの場合も派遣社員自身の意向だけでは叶いません。

派遣先が派遣社員の直接雇用を考えていないなら、難しいでしょう。特に派遣社員の正社員化に前例がない会社では困難になります。雇用期間の定めがない派遣社員になるには、所属する派遣会社との契約が変化するため、派遣が社側が応じてくれないと実現しない方法です。

派遣先の都合で契約打ち切りもある

正社員として働く場合、よほどの理由がない限りは会社都合で失業しません。業績不振や人件費の削減をしたくても、正当な理由がなければ従業員を解雇できず、労働者の権利が守られるようになっています。

しかし、派遣社員は業績不振や人件費の削減を目的に、契約の打ち切りも容易です。3年間は働けると思っていたら、次回は更新しないと言い渡され、同じ職場で働けなくなる可能性もあります。

事務の派遣社員が正社員になるために必要なこと

派遣社員で働くメリット・デメリットを比較し、メリットのほうが大きいと感じるなら派遣の事務で働くと良いでしょう。今後も自分のライフプランに合せて、派遣社員を続けるのも働き方の一つです。

しかし、デメリットが大きい・不安だと感じるならば、正社員の事務として働く方法を考えたいところ。経験がないのでひとまず派遣の事務で働く場合も、将来的に不安を感じるならば、正社員雇用されるためのアクションが必要です。

自己分析

事務の派遣社員から正社員を目指す場合に限らず、就職・転職の際は自己分析が重要です。自分は何を重視し、どのようなスキル・経験を持っているのか、どんな働き方がしたいのかを徹底的に考えましょう。

転職サイトや転職エージェントなどでは、転職に向けた自己分析を提供するサービスを提供しているところもあります。自分一人では自己分析に行き詰まるなら、活用してみましょう。

スキルアップ

正社員として安定した働き方を実現し、キャリアアップを考えるなら、スキルを向上させましょう。正社員の求人に応募する際も、スキルがあるほうが自分を売り込みやすく、自信にもつながります

事務職未経験で事務職の正社員を目指すならば、派遣の事務で実務経験とスキルを身につけるのも方法です。何となく仕事をこなすのではなく、キャリアプランを考えて行動することで、正社員として働く道が開けます。

職場の人間関係・コミュニケーション

バックオフィスで働く事務職は人前に出ないので、人間関係やコミュニケーションで悩むことはないと考えているなら、大きな誤解です。むしろ、バックオフィス業務のほうが、職場の人間関係や円滑なコミュニケーションが求められるケースも少なくありません。

取引先との連絡や書類作成などで営業職のサポートをするなら、営業担当との信頼関係を構築し、業務に必要なコミュニケーションを取る必要があります。営業不在時に取引先からの問い合わせに対して代理対応することもあり、コミュニケーションスキルが求められます。

営業職と関わらない場合でも、バックオフィス業務を円滑に回すには、職場内のコミュニケーションが欠かせません。職場の人全員と友だちになるくらいフレンドリーに接する必要はありませんが、業務上の報告・連絡・相談がきちんとできないと務まらない仕事です。

事務の派遣社員が正社員になる方法

事務の派遣社員として経験を積み、正社員を目指す場合、いくつか方法があります。今は派遣でも、ゆくゆくは正社員の事務職に就きたいと思うなら、これから紹介する方法を知っておきましょう。

正社員採用している企業に応募して採用される

派遣事務の仕事と並行して正社員で働ける求人を探して応募する、または派遣期間が終わってから正社員で働ける求人に応募する方法です。

正社員で働ける事務職は競争率が高いですが、派遣で働いていた経験を生かし、アピール材料として活用しましょう。そのためには、派遣で働いているときに、しっかり事務スキルを身につけておくことが大切です。

また、なぜ派遣社員ではなく正社員で働きたいのか、説明できるようにしましょう。事務職で働きたいというだけでは、今まで派遣で働いていたのだからそれでいいのではないかと思われてしまいます。今後のキャリアや応募した企業に感じた魅力などを理由に挙げ、志望動機に織り込めばアピールに効果的です。

派遣先の企業に正社員として直接雇用される

通常の派遣では3年ルールの制約があるため、同じ職場で働ける期間が決まっています。しかし、会社によっては派遣社員を積極的に直接雇用へ切り替えているところもあります。

同じ職場で仕事を続けられ、職場内の人間関係もある程度できているので、別の会社に就職するより仕事がやりやすい一面も。ただし、派遣社員を直接雇用する前例がない会社では、難しい可能性があります。

また、派遣社員の直接雇用を行っている会社でも、3年の期限が過ぎてから正社員化している場合、正社員になるまで時間がかかる点に注意しましょう。1年以内・数ヶ月以内に正社員になりたいと考えるなら、この方法では難しいといえます。

加えて、派遣先に直接雇用されても、正社員になれるとは限らない点も要注意です。契約社員や嘱託職員などの名称で、昇給・賞与・退職金などがない、正社員とは待遇の異なる形式で直接雇用となる場合もあります。

紹介予定派遣を利用して正社員採用される

通常の派遣から正社員として直接雇用されるかは、派遣先の会社次第です。派遣で働いて職場が自分に合うか確かめたうえで正社員になりたいと考えるなら、紹介予定派遣を使ったほうが確実です。

紹介予定派遣も派遣先に直接雇用されるまでの流れは同じですが、直接雇用を前提として紹介された職場に派遣されます。直接雇用された際の待遇を明示したうえでの派遣となり、派遣社員と派遣先の同意によって直接雇用が決まります。

直接雇用になるまでの期間も通常の派遣から直接雇用を目指すより短く、早く正社員になりたいときにも有効な方法です。

事務の派遣社員から正社員になると変化すること

派遣社員から正社員になると、さまざまなことが変化します。メリットに感じることもあれば、デメリットに思えることもあるものです。

事務の派遣社員から正社員を目指すときは、立場が変わることでどのような変化があるかも心に置きましょう。

雇用形態が変わる

まず、正社員になると雇用形態が変わります。

派遣社員のときは、所属する派遣会社を通して派遣先で働いていました。仕事上のトラブルや条件交渉などは、派遣会社を通しての話し合います。

派遣先に直接雇用されると、間に入る存在はなくなり、仕事上のトラブルや条件交渉は勤め先である会社と直接行わなければなりません。直接意見できるため、やりやすいと感じる人もいれば、間に入る存在がなくて不安に感じる人もいるでしょう。

また、正社員として働く場合、定年まで雇用契約が続くケースが一般的です。派遣社員のように定期的な契約更新がなく、会社都合での解雇も滅多にないため、長期的なキャリア形成ができるようになります。

給与形態が変わる

雇用形態の変化に伴い、給与形態も変化します。

派遣社員は多くの場合、給与が時給計算です。働いた時間数に応じて給与が決まるため、休業日の多い月・少ない月で収入に差が出ます。

正社員になると毎月の基本給や手当などから給与が算出されるため、月ごとの変動がなくなります。派遣社員には適用されていなかった手当が支給されたり、ボーナスが出たりと、同じ仕事内容・労働時間でも収入が増える可能性もあるでしょう。

担当業務の変化や部署異動の可能性がある

派遣社員で働く場合、業務の変化や部署異動は基本的にありません。業務の変化や部署異動が発生する場合は、派遣会社を通じて派遣契約の変更が生じ、派遣社員も同意のうえでとなります。

正社員の場合、業務の変更や部署異動の可能性があります。本人の意向を聞いたうえで個別対応してもらえることもありますが、基本的には会社方針に従って変更や異動を受け入れることになるでしょう。

昇進・昇格のチャンスがある

業務の変更や部署異動といった負担が生じる可能性はあるものの、正社員になれば昇進・昇格のチャンスにも恵まれます。

派遣社員は直接雇用ではなく、業務内容が固定で働ける期間が限られているため、責任ある役職に就けません。負担や責任がないという面ではメリットですが、キャリア形成を考えた際にはデメリットとも言える部分です。

仕事で成果を出し、事務職でのキャリアアップを考えているなら正社員を目指しましょう。

まとめ:事務職でどんな働き方がしたいかを考えよう

事務職の派遣社員で働くメリット・デメリットを紹介し、正社員になる方法や正社員になった場合の変化を解説しました。

これから派遣の事務職で働く方は、今後どうなりたいかも考えておきましょう。派遣社員で柔軟な働き方を維持したいのか、いつかは正社員で働きたいと思っているのかなど、目指す働き方によって必要な行動は異なります。

いつかは正社員の事務職で働きたいのであれば、派遣で働きながら求人情報をチェックしたり、紹介予定派遣を利用したりといった行動が必要です。

この記事を書いた人
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事務たぬき

事務歴十数年のたぬきです。
就職氷河期で苦しみ、合わない仕事に疲れ、転職して事務職に就くも会社倒産。再就職先がブラック体質で心を病み……持ち直して事務の派遣で仕事に復帰したのち直接雇用となるも、仕事量と給与のバランスに納得できず、組織に属することを諦めました。
現在、フリーライターとして死なない程度に生きてます。