事務職も在宅ワーク・リモートワークは可能?難しい理由やメリット・デメリットを解説

2025年1月9日

働き方が多様化し、在宅ワーク・リモートワークが可能な職場も以前より増えてきました。しかし、業務内容によっては職場に行かなければ実行できないこともあるため、すべての職種で在宅ワーク・リモートワークが可能なわけではありません。

事務職も資料のファイリングや備品補充、郵送物の送付などを担当していると、在宅ワーク・リモートワークで働くことが難しくなります。

なかには、事務職の在宅ワーク・リモートワークを認めている企業も存在しますが限定的です。離職せずに育児や介護と両立するための措置であるケースも多く、事務職で働く人の多くは職場に出勤しているのではないでしょうか。

今回は事務職の在宅ワーク・リモートワークが可能か、事務職が在宅ワーク・リモートワークで働くにはどんなスキルや環境が必要かなどを紹介します。

目次

在宅ワーク・リモートワークで働ける事務職も増えている?

「事務職 在宅ワーク」「事務職 リモートワーク」などで検索していると、在宅ワーク・リモートワークで働ける事務の求人を見かけることがあります。しかし、内容を個別に確認していると、週に何度か出勤が必要であったり、在宅ワーク・リモートワークを希望する場合は個別相談であったりと、完全在宅の事務求人は滅多にありません。

完全在宅・完全リモートで働ける事務職の求人があったとしても、即戦力となる実務経験者や、すぐに自宅で働ける環境が整っていることを前提とするケースが多い状況です。未経験者や在宅で働く環境をこれから準備する人は、在宅ワーク・リモートワークの事務職で働くのは難しいといえます。

完全在宅・リモートで働くには経験やスキルを求められることが多い

事務職に限らず、職場に全く出勤しない完全在宅・完全リモートで働くには、多くの場合、豊富な業務経験や高水準のスキルを求められます。

毎日職場に出勤する新人ならば、手本を見せたり、対応に困ることがあるようならフォローに入ったりできます。しかし、職場に出てこない新人にはメッセージツールや電話連絡での指示のみとなるため、簡単な指示で内容を理解し、業務を進められる人物でなければ務まりません。

そのため、完全在宅・完全リモートで働く求人には、最初から経験やスキルを有している人材が求められます。

そもそも、出社しない事務担当者を求めているのは、事務処理を任せたい個人事業主やフリーランス、人手を補充したい経営者などです。未経験者を採用してじっくり研修するのではなく、即戦力を必要としているため、事務の実務経験やスキルがある人を求めています。

事務職が在宅ワーク・リモートワークで働く際に必要なスキル

事務職が在宅ワーク・リモートワークで働くならば、以下のスキルが必須です。

  • PCスキル全般
  • 基本的なビジネスマナー
  • コミュニケーション能力

在宅ワーク・リモートワークでなくても、データ入力や書類作成を担当する事務職では、PCスキルが欠かせません。在宅ワーク・リモートワークで働くならば、通常の事務業務で求められるスキルに加えて、ネットワーク環境やセキュリティ体制を整えたり、PC周りのトラブル発生を自分で解決したりできる能力が必要です。

在宅ワーク・リモートワークにあたり、独自システムや指定のメッセージツールを導入する必要もあるでしょう。自宅で仕事をするなら、社内のシステム担当者を呼んで対応してもらうことは原則できないため、自力で対応できるだけのPCスキルが求められます。

ビジネスマナーは働き方を問わず必要ですが、完全在宅を希望するなら、丁寧な新人研修を受ける機会はないと思ったほうがよいでしょう。

メールやメッセージツールを使った報・連・相をはじめとするコミュニケーションがスムーズな人でなければ、仕事を任せづらく感じられます。自分のペースで働きやすい在宅ワーク・リモートワークでも、業務に必要なコミュニケーション能力は重要です。

事務職が在宅ワーク・リモートワークで働く際に必要な環境

事務職が在宅ワーク・リモートワークで働く場合、環境が整っていなければなりません。

  • 仕事で使う自分専用のPC
  • ネットワーク環境
  • セキュリティ体制
  • 不具合発生時のバックアップ体制
  • 業務で必要なアプリケーション(Word、Excelなど)
  • Webカメラやマイク(オンライン会議がある場合)

会社側でノートパソコンなどの端末を支給してくれるケースもありますが、取り扱いには十分な注意が必要です。家族であっても、社外の人間に機密情報を見られることがないよう、のぞき見されない環境で仕事する、パスワードをかける、など対策します。

また、作業用の机やイスもあったほうが良いでしょう。長時間の事務作業に適さない机・イスでは体に負担がかかり、肩こりや腰痛、眼精疲労などにつながります。

在宅ワーク・リモートワークが難しい事務の仕事

データ入力や書類作成などは、在宅ワーク・リモートワークでも対応可能な業務です。しかし、事務の仕事の中には、職場に出勤しないと対応が難しい、あるいは対応できない仕事もあるため、完全在宅・完全リモートが容易にできません。結果、事務職で働く人は在宅ワーク・リモートワークを選べない会社も多く存在しています。

ここからは、在宅ワーク・リモートワークでの対応が難しい事務の仕事を紹介します。これらの業務を担当しなくて良い事務職であれば、在宅ワーク・リモートワークで働ける可能性が高くなるでしょう。

来客対応・電話対応

受付や取次、応接への案内、届いた荷物の受け取りなどの来客対応は、出勤しないとできない仕事です。事務職がこれらの業務に対応しているだと、在宅ワーク・リモートワークができない可能性が高まります。

電話対応は、会社の固定電話への着信を携帯端末に転送できるなら、在宅でも対応可能です。しかし、設備を整える必要があるため、現実的には難しいでしょう。

書類のファイリング

会社で保管する書類のファイリング作業は、自宅で行うことができません。書類をファイルを自宅に持ち帰れば作業自体は可能ですが、持ち出せない書類も存在するでしょう。持ち出し可能な場合も、出勤せずに必要な書類とファイルを取り寄せる方法が必要です。

書類の電子化が進めば、書類の処理状況に合わせてオンライン上でファイル整理できるようになります。この方法ならば、出勤しなくてもファイリング作業と同じ業務が可能です。

ただし、書類の電子データは自動的に所定の保管場所へ保存されるシステムなら、ファイリング作業自体がなくなります。

書類の配布・回収

各従業員に配布する書類の受け渡し窓口を、事務担当が担うケースがあります。

たとえば、年末調整の書類を事務所ごと・営業所ごとに人事部から事務担当者へ送り、事務担当者が部署内の各従業員に配布、期日までに回収して人事部へ送り返すといった業務です。事務担当者は書類を受け取り、配布して回収、返送するという作業のために出勤を余儀なくされます。

この業務も書類を電子化すれば出勤不要となりますが、同時に作業そのものがなくなる可能性もあります。人事部から電子データで書類を各従業員へ一斉送信し、所定のシステム上にアップロードする形で各自が提出するなら、受け渡しや取りまとめの作業が不要です。

郵送物などの発送

取引先への資料送付、顧客への請求書発送などを各担当者が個別に処理するのではなく、事務担当者がまとめて郵便局へ持ち込んでいる会社も多いでしょう。紙の書類などの現物を扱うため、出勤しなければ対応できない業務です。

見積書やプレゼン資料、請求書などは、電子メールを使ったデータ送付も可能です。しかし、データ送付では対応できない、商品サンプルや金券、改まったシーンでの挨拶状などもあります。これらをまとめて郵便局へ持ち込む必要があり、事務職がそれを受け持っているなら、出勤しないと対応できません。

現金や金券の管理

業務で必要な現金や金券を事務所内で管理し、入手金を事務職がチェックしている場合も、事務職の在宅ワーク・リモートワークを困難にします。

管理担当者だからといって、会社で扱う現金や金券を自宅に持ち帰ることはできません。出金を希望する担当者へ渡すためにも、出勤して対応する必要が出てきます。

在宅ワーク・リモートワーク可能な事務の求人はどこにある?

在宅ワーク・リモートワークが可能な事務職の仕事は、求人・転職情報サイトや人材派遣会社、事務代行サービス、クラウドソーシングなどで探しましょう。

ただし、在宅ワーク・リモートワーク可能と記載されていても、「週に数日出勤」「月末月初は出勤」など、部分的な在宅ワーク・リモートワークとしているケースがあります。あるいは、家庭の事情に合わせて、必要ならば在宅可能とし、原則出勤という求人情報もあるため、内容は十分に確認しましょう。

また、完全在宅・リモートが可能な事務職であっても、自宅の仕事環境をどこまで自分で用意しなければならないか、会社から支給される設備はあるのかなども事前に確認しましょう。

求人・転職情報サイト

一般的な求人・転職情報サイトでも、在宅ワーク・リモートワーク可能な事務の求人を掲載しているケースがあります。出勤を前提とし、在宅ワーク・リモートワークは個別相談とするケースも多いため、内容はよく確認しましょう。

人材派遣会社

派遣会社に登録し、在宅ワーク・リモートワークで働ける事務職を紹介してもらうこともできます。ただし、完全在宅・リモートの事務職は案件数が限られるため、相応の経験やスキルを持っていないと、仕事が回ってこない可能性はあります。

事務代行サービス

近年、事務の仕事を外注したい企業や個人事業主と、在宅ワーク・リモートワークの事務で働きたい人をマッチングさせるサービスも登場しています。事務代行サービスでは、そうしたマッチングのために、在宅で事務の仕事ができるワーカーを募集しています。

事務代行サービスに所属して働く場合、チームで業務を分担するケースもあるため、事務の在宅ワーク・リモートワークが初めての人も挑戦しやすい働き方です。

クラウドソーシング

個人事業主・フリーランスなどがクラウドソーシングサイトを使い、リモートで事務の仕事ができる人を探していることがあります。

在宅事務を募集している側は、本業が忙しく、事務作業を外注したいと考えています。そのため、即戦力であることが求められ、事務としての実績を証明できないと受注は難しいでしょう。

また、業務範囲や報酬、対応期間などの条件も、十分に確認しておく必要があります。どこまでの業務をいくらで・いつまで受けるかを明らかにしておかないと、割に合わない働き方をする可能性があります。

事務職が在宅ワーク・リモートワークするメリット

在宅ワーク・リモートワークに切り替えると、以下のメリットが得られます。

  • 通勤時間をなくせる
  • 仕事の合間に家事や育児などができる
  • 自分が働きやすい環境を整えられる

これらのメリットにより、ライフスタイルに合わせた働き方がしやすく、より作業効率を高められるでしょう。

通勤時間をなくせる

事務職に限らず、出勤する働き方から在宅ワーク・リモートワークに切り替えると、通勤にかかる時間を削減できます。

自宅が職場になるため、朝の家事を終えればすぐ業務に入ることが可能です。業務終了後もすぐにプライベートな時間へと以降できます。

通勤に必要な交通費も不要となるため、会社の経費を抑える効果も期待できます。

仕事の合間に家事や育児などができる

在宅ワーク・リモートワークは、業務の合間に自宅で家事や育児を行うこともできます。自己管理が重要となりますが、出勤していると対応できないこともクリアできるのは大きなメリットです。

掃除や洗濯など、日々の生活に必要な家事はもちろん、子どもの送り迎え、通院への付き添いなども仕事合間にこなせます。上手くスケジュール調整すれば、時間に融通が利く働き方ができます。

自分が働きやすい環境を整えられる

自宅が職場になる働き方ならば、空調の温度設定や作業中の明るさなど、環境も自分好みに整えられます。会社に出勤している場合、必ずしも自分好みの環境にできるとは限りません。

在宅ワーク・リモートワークなら、好きな音楽を聞きながら、好きなお茶を飲みながら働くことも容易です。より、自分が働きやすく、作業効率を高められる環境を構築できます。

事務職が在宅ワーク・リモートワークするデメリット

在宅ワーク・リモートワークには大きなメリットがありますが、デメリットの存在も無視できません。在宅ワーク・リモートワークをする場合、以下のデメリットにも留意したうえで取り組みましょう。

  • 仕事とプライベートの分離が難しい
  • 業務上のコミュニケーションを取りづらい
  • 持ち出せない書類・資料があると完全在宅にできない

人によっては、デメリットによる負担のほうが大きく感じられることもあります。そのような場合は在宅ワーク・リモートワークにこだわらないことも大切です。

仕事とプライベートの分離が難しい

通勤時間がないことや仕事の合間に他の用事ができるのは、在宅ワーク・リモートワークのメリットです。その一方で、仕事とプライベートの分離を難しくする原因でもあります。

仕事とプライベートの時間が混在する働き方だと、何時間働き、休憩をどれだけ取ったかが分かりづらくなります。会社側が従業員の労務管理をするうえでも、労働時間と休憩が把握できないのは大きな問題です。

人によっては出社して働くほうが仕事に専念でき、効率よく業務を進められるケースもあるでしょう。自分には合わないと感じるなら、在宅ワーク・リモートワークを止める判断をするのも重要です。

業務上のコミュニケーションを取りづらい

在宅ワーク・リモートワークで働く場合、業務で必要なコミュニケーションを取る方法が限られます。ちょっとした疑問やつまずきをすぐに解消できず、業務が滞るかもしれません。

出社して働いている状態なら、何かを聞きたい相手と直接話すことが可能です。メールやチャットツール、電話ではつかまりにくい人にも、方法を変えてアプローチできます。

しかし、在宅ワーク・リモートワークの場合、コミュニケーション手段はメールやチャットツール、電話などに頼るしかありません。文字による連絡を無視され、電話しても移動中や会議中を理由に出てもらえないと、コミュニケーションが取れなくなります。

持ち出せない書類・資料があると完全在宅にできない

社外秘となっている書類や資料は、基本的に自宅へ持ち帰れません。書類の処理や作成を自宅で進めたいからといって社外へ持ち出すと、大きな問題に発展する恐れがあります。

許可を得て持ち帰ることができたとしても、社内にある資料を受け取るために出社が必要です。そのため、社外秘資料を扱う事務職では、完全在宅での働き方は難しいといえます。

事務職が在宅ワーク・リモートワークする際に注意したいこと

事務職が在宅ワーク・リモートワークする際は、以下の点に注意しましょう。

  • 出社日・在宅日を周知する
  • 仕事とプライベートにメリハリをつける
  • コミュニケーションツールの活用方法を知る
  • 万全なセキュリティ体制を用意する
  • 体に負担のかからない環境を作る

これらに注意することで、在宅ワーク・リモートワークでもスムーズに仕事を進めやすくなり、負担を減らせます。

出社日・在宅日を周知する

部分的な在宅ワーク・リモートワークとなる場合、出社して働く日・在宅で働く日を職場の人に周知しておきましょう。

周知できていないと「今日手渡しする書類があったのに」「○○の処理について直接聞きたかったのに」などと、周りから不満を持たれる原因です。

スケジュール共有ツールに出社日・在宅日の予定を入れておくのも有効です。チャットツールの表示名に、在宅で働く日の予定を入れておくのも良いでしょう。

仕事とプライベートにメリハリをつける

自宅で働くと仕事の合間に他の用事できる反面、プライベートとの分離が難しくなります。そのため、在宅ワーク・リモートワークで働く際は、仕事とプライベートにメリハリを付けられるかが重要です。

仕事の合間に家事や育児の用事を済ませる際も、しっかりスケジュールを立てて行動し、両立できるようにしましょう。仕事の時間は十分に取れているか、逆に働き過ぎていないか、休憩は取れているかも考えて行動することが大切です。

コミュニケーションツールの活用方法を知る

在宅ワーク・リモートワークで働く場合、コミュニケーションを取りたい相手の様子が分からないことも珍しくありません。

文字だけのコミュニケーションでは、一方的に言いつける印象を与えるケースがあります。通話の際も、相手がどのような状況かが掴めないと、円滑なコミュニケーションを阻害します。

コミュニケーションツールをどのように使えば相手に伝わるかを意識し、活用方法を知る努力をしましょう。

万全なセキュリティ体制を用意する

自宅のパソコンを使って在宅ワーク・リモートワークする場合、セキュリティ体制を整えることが不可欠です。

ウイルスソフトをインストールし、適宜更新しましょう。定期的なウイルスチェックも実施して、ウイルス感染や情報漏えい、データ破損などのリスクに備えます。万が一の場合に備えた、データバックアップも事前に考えて実施しましょう。

体に負担のかからない環境を作る

自宅で仕事をする場合、体に負担のかからない環境作りも大切です。会社の事務所には事務仕事に適した机や椅子が用意されていますが、自宅ではそこまで環境が整っていないケースもありまう。

机や椅子の高さ、照明の明るさなどを考え、負担のかからない環境で働けるようにしましょう。

まとめ:事務職も在宅ワーク・リモートワークで働けるけど難しい面もある

在宅ワーク・リモートワークで働ける事務職の求人も一部では存在していますが、現実的には難しい面もあります。

電話対応やファイリング、書類の発送業務、現金管理などは、出社しないと対応できません。これらの業務がある事務職では、在宅ワーク・リモートワークが現実的でなく、在宅ワーク可としていても、部分的なものになっています。

もし、事務職で在宅ワーク・リモートワークができる場合は、メリット・デメリットを理解して取り組みましょう。

この記事を書いた人
アイコン画像(事務たぬき用)
事務たぬき

事務歴十数年のたぬきです。
就職氷河期で苦しみ、合わない仕事に疲れ、転職して事務職に就くも会社倒産。再就職先がブラック体質で心を病み……持ち直して事務の派遣で仕事に復帰したのち直接雇用となるも、仕事量と給与のバランスに納得できず、組織に属することを諦めました。
現在、フリーライターとして死なない程度に生きてます。