事務職が年収を上げるには?年収を上げる方法と年収アップに向けて取り組みたいこと

デスクワークで会社業務を支える事務職は、多くの企業において欠かせない存在です。しかし、事務職で働く人の多くは年収が低く抑えられ、なかなか収入アップできません。「年収が上がらない」「他の職種に比べて収入が低い」と感じながら働く事務職の方も多いのではないでしょうか。

事務職の年収が低い・上がらない背景には、仕事内容や評価基準などが影響しています。

では、事務職は頑張っても収入が上がらないのかというと、そうとは限りません。資格取得や部署異動、転職など、収入アップを狙える方法は存在します。

今回は、事務職の年収がどれくらいかを紹介しつつ、収入アップを目指すために取り組みたいアクションを解説します。キャリアと生活を向上させるためのヒントを見つけましょう。

事務職の年収は低水準?平均年収に届かない収入実態

賃金構造基本統計調査では、さまざまな産業で雇用されている労働者の収入を調査し、統計を取っています。2024年12月時点で公開されている最新版・令和5年賃金構造基本統計調査によると、事務職の平均年収は400万円~500万円程度でした。

この結果は年齢や男女で分類せず、役職者も含めた平均年収です。事務職で働く女性のみに限定すると平均年収は360万円~410万円程度にまで下がります。さらに、役職者を除いた女性事務職の平均年収は340万円~390万円程度です。

令和5年の民間給与実態統計調査では、会社から給料をもらっている人の平均年収は460万円でしたので、全体の平均に届いていない状況がうかがえます。

事務職の年収が低い・上がらないワケ

なぜ、事務職の年収は低く抑えられ、上がりにくい状況なのでしょうか。それには、事務職が受け持つ仕事の内容や性質などが影響しています。

仕事の内容・成果が会社業績に直結しない

まず、事務職が担当するデスクワークは、会社業績に直結しない仕事です。「顧客を獲得した」「売上を伸ばした」といった、利益につながる具体的な結果が出ません。

バックオフィス業務も重要な仕事ではあるものの、利益に直結する仕事と比べると貢献度が低く感じられます。その結果、やりがいのなさや仕事で評価されにくい状況を作り出しています。

ただし、見方を変えると事務職は会社業績に関わるプレッシャーがない仕事です。販売数や営業成績を競い、ノルマを課せられる立場ではない分、気負わずに働けるメリットはあります。

専門知識やスキルを必要としない業務が多い

事務職の仕事は専門知識やスキルを必要としない業務が多いことも、年収を上げづらくしています。

指示に基づくデータ入力や書類作成、ファイリング、電話対応、来客対応などはやり方を覚えれば誰でもできる業務です。未経験でも挑戦しやすいと捉えればメリットですが、年齢や収入面に不安があると厳しく感じます。

また、事務職で働く際は経験者が有利になるとは限りません。採用する際も、より長く働ける可能性があり、給与を決める際に年齢を考慮しなくてもよい、若い人のほうが選ばれやすいケースもあります。

さらに、近年は事務作業を自動化できるツールも増え、文書作成できる生成AIも一般化しています。今後、事務職が受け持つ仕事はどんどん減少するかもしれません。

こうした状況から、事務職の仕事は評価されにくく、他の職種と比較して年収が上がりにくくなっています。

ルーティンワークが多く、残業が少ない

ルーティンワーク中心で、他の職種と比べて残業が少ない点も、事務職の年収を下げる要因です。

ツールを使いこなせば自動化できる事務作業も多く、書類の電子化が進めばファイリングの手間も省けるでしょう。時間や人手がかからなくなれば自然と事務職の求人は減り、現在事務職で働く人は残業せずに済みます。

残業がなくなればプライベートに時間を使えて、ライフワークバランスが取りやすくなるのはメリットです。しかし、残業代によって収入の低さを補っていた場合、収入減に直結します。

評価されづらい風潮にある

業績に直結せず、スキル不要な業務を担当し、残業もないなら、事務職は仕事での評価を得にくい立場になります。周りからは、楽そうな印象を持たれ、頑張りが評価されにくい風潮です。

一般職・総合職の分類においても、一般職に属する事務職だと業務の範囲が限られ、貢献度も低く見られます。結果、給与の査定においても他の職種と比べて加点評価の機会が失われてしまい、給与が上がらない、年収が低い・上がらないという事態につながります。

年収に不満のある事務職が収入アップする7つの方法

年収が低い水準にあり、給与がアップしづらい状況にある事務職。ここからは、年収に不満のある事務職が収入アップする方法を紹介します。

どの方法で収入アップを狙うべきかは、状況によって異なります。自身の置かれている状況を考え、適した方法で収入アップを狙いましょう。

勤続年数を増やす

勤続年数に応じて少しずつ基本給を上げる企業が多い傾向です。

今の職場や仕事内容を気に入っていて、収入の少なさに問題を感じているなら、長く勤めて収入アップを狙うのは良い方法です。急激な収入増は狙えませんが、着実に年収を増やせるでしょう。

昇進・昇格する

昇進・昇格して管理職になれば、基本給や手当の追加などで収入アップできます。勤続年数を増やすことに加えて、社内で昇進・昇格すれば、着実に収入を増やすことが可能です。

ただし、管理職の立場になると、部下の指導やマネジメントが必要となり、仕事の進め方は変化します。

正規雇用になる(非正規事務職の場合)

派遣社員や臨時雇用の事務職の場合、給与を時給・日給で計算しているケースがあります。年末年始やお盆休み、祝日の多いゴールデンウィークがあると出勤する日数が減るため、収入の下がる月が発生します。

企業に直接雇用され、雇用期間を限定されない立場になれば、祝日による出勤日数の増減が給与に影響しません。結果として収入アップになるため、派遣や臨時雇用などの非正規の雇用形態で働いている事務職の方は、正規雇用を目指すのも方法です。

専門性の高い事務職に異動・転職する

事務職の中にもさまざまな仕事があり、専門性の高い分野の事務職は給与が高い傾向です。専門性の高い事務職に異動または転職すれば、収入アップを狙えます。

「事務でアシストする仕事がしたいけれど、収入面に不満がある」
「得意分野を活かして、もっとやりがいのある事務職に就きたい」

……など、考える方は、自分の特性を考えて、専門性の高い事務職を目指してみましょう。求められる仕事のレベルは高くなりますが、収入アップにつながります。

事務以外の職種に異動・転職する

事務職にこだわらないなら、違う職種に異動・転職することで収入アップも可能です。仕事内容は大きく変化しますが、事務職よりも評価されやすくなり、頑張り次第で大きく収入を増やせるでしょう。

事務の仕事で必要となる書類作成やスケジュール管理などのスキルは、他の職種でも活かせます。事務職のままでは収入アップが難しいと感じるなら、他の職種への異動や転職を視野に入れてみましょう。

給与水準の高い業界・企業・地域で働く

現在の勤務先よりも給与水準の高い場所で働くことも、収入アップを考えるうえで有効です。業績好調な企業や給与水準の高い業界に転職すれば、以前よりも基本給や手当の額が上がる可能性があります。

また、地域による給与の差もあり、地方よりも都市部の会社に勤めるほうが、収入を増やせます。ただし、転居を伴う場合はその費用がかかり、都市部は家賃や物価が高いことも考慮するしましょう。

空き時間を使って副業する

残業がなく、休日も十分に取れる状況ならば、空き時間を使って副業すれば収入を増やせます。業務経験や特技、趣味などを活かし、週末だけの起業も可能です。

ただし、副業に取り組む場合は、勤務先の就業規則に違反しないか注意しましょう。副業の予定に時間を取られ、十分な休息が取れなくなっては問題です。副業は、本業に支障が出ない範囲で取り組む必要があります。

収入アップしたい事務職が取り組みたいアクション

収入アップする方法を紹介してきましたが、実際行動に移すのは簡単ではありません。異動や転職はすぐに実現するとは限りませんし、昇進・昇格も思ったタイミングで叶わないケースもあるでしょう。

何より、短絡的な決断は失敗したときのリスクが大きく「こんなはずではなかった」と、後悔する原因です。

異動や転職などの行動に移る前に、取り組みたいアクションを紹介します。

自己分析する

自己分析は、異動や転職以外のシーンでも重要なアクションです。まずは自分の現状を振り返り、どのような働き方がしたいのか、何に不満を持っているかを洗い出しましょう。

  • 今の職場環境は満足していて収入の低さが不満
  • もっと自分のスキルが評価される仕事をやりたい
  • 残業が少ないのは良いけれどやりがいがない

など、自己分析することで問題の本質がわかり、取るべき行動を明確にできます。

もし、自分だけでは自己分析が進まないと感じるなら、セミナーやコーチングの利用もおすすめです。自分の抱える問題や強みを客観的に見てもらう機会となり、自己分析がやりやすくなります。

ただし、セミナーやコーチングを受ければ収入が上がるわけでありません。セミナーやコーチングはあくまでも自己分析の一環であり、収入アップを目指す過程のひとつであると認識しましょう。

仕事に役立つ資格を取る

仕事の幅を広げたり、効率化を図ったりする際に役立つ資格は数多く存在します。自分のアピールポイントが増えるので、仕事に役立つ資格があるなら取得を検討しましょう。

また、事務職から他の職種への異動・転職を考える際、未経験の分野であるなら資格があることで有利に働く可能性もあります。実用性が高く、評価につながる資格ほど難易度は高くなりますが、収入アップを考えるなら挑戦しましょう。

転職サイトや転職エージェトに登録する

転職すると決めていなくても、転職サイトや転職エージェントの利用は可能です。どのような求人情報があるか知れば、現在の標準的な額なのか、低い水準なのかを判断できます。

転職サイトや転職エージェントでは、適性を簡単に調べられるツールを提供しているところもあり、自分でも気づかなかった可能性を知る機会になるでしょう。キャリアの棚卸しを手伝ったり、履歴書・職務経歴書の書き方をアドバイスしてもらったりできるサービスをやっているところもあります。

自分の市場価値を知り、自己分析に役立つので転職サイトや転職エージェントに登録してみましょう。ただし、利用者登録すると、担当者をつけられ、営業がうるさく感じるかもしれません。

スキマ時間を使った副業に挑戦する

時間的に余裕があり、勤務先の就業規則にも問題がないなら、副業に取り組むことで自身の可能性を拓けます。もしも副業で取り組んだ仕事が上手く行かなかったとしても、自分には向いていなかったのだと諦めれば済む話です。

副業で収入を得ることはもちろん、本業と違う仕事に挑戦する経験や新しい人脈から、やりたいことが見つかる間もしれません。副業でやっていたことを本業にし、独立する道が開けることもあるでしょう。

まとめ

事務職の平均年収は他の職業と比較して低く、女性はさらに低い傾向です。事務職の収入が低い背景には、担当業務が業績に直結しにくく、専門性やスキルを問われないこと、業務内容が評価されにくい傾向にあることなどが上げられます。

事務職で働く方が年収アップしたいなら、勤続年数を増やす、昇進する、専門性の高い仕事に異動・転職する、副業をするなどの方法があります。しかし、異動や転職にはリスクもあるため、安易な決断はおすすめできません。

まずは自分の状況を客観的に分析し、目標を明確にすることが重要です。具体的には自己分析や資格取得、転職サイトの活用などが挙げられます。これらの取り組みを通して、自分の市場価値を把握し、キャリアアップを目指しましょう。

この記事を書いた人
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事務たぬき

事務歴十数年のたぬきです。
就職氷河期で苦しみ、合わない仕事に疲れ、転職して事務職に就くも会社倒産。再就職先がブラック体質で心を病み……持ち直して事務の派遣で仕事に復帰したのち直接雇用となるも、仕事量と給与のバランスに納得できず、組織に属することを諦めました。
現在、フリーライターとして死なない程度に生きてます。